不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「すみません、私、いつの間にか寝て……」


 エントランスに向かいながら、桜坂社長を見上げて謝る。


「寝不足か?」


 昨日はいよいよ引っ越しだと思うとなかなか寝付けなくて、ベッドの中でスマートフォンで漫画を読んだり、ゲームをしたりして眠気がくるのを待っていた。

 普段はスマートフォンを持ったまま寝てしまうことも多いのに、昨日は逆にどんどん目が冴えてしまった。


「はい……ちょっと、普段よりは。今日のことをいろいろ考えていたら、遅くなってしまいまして……」


 正直に白状すると「そうか」と抑揚のない声が返ってくる。

 そんな風にいろいろ考えて寝不足をするなんていうのも、私のほうだけなんだろうなと桜坂社長の様子を見ていて思ってしまった。

 そもそも、私とのことをそこまで重要に考えてはいないのだと思う。

 会社の代表として日々忙しい生活を送っているわけだし、私と始める新生活のことなんてほんの些細な事柄のひとつにすぎないに違いない。

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