つまり、会いたいんです。

おまけ(会えた!)

「よし」

一花はマスクを取って鞄の中にしまうと、声に出して言った。

あれ?私ったら、何を気合入れてるの?

そう思いながら玄関横のインターホンに手を伸ばしたが、それを押す前に扉が開いた。

「いらっしゃい」

扉を開けながら、榛瑠が笑顔を一花にむけた。

変わらない優しい笑顔、変わらない落ち着いた声。

「こんにちわ」

一花はドキドキしながら、笑顔で答えて家の中に入る。

「元気でしたか?」
「うん」

自粛明け、会社への通勤が始まる直前の土曜日だった。

会うのはいつぶり?なんだかものすごく昔な気がする。

一花が玄関先に上がると、榛瑠は「良かった」と言って一花を抱きしめた。

一花も抱きしめ返す。確かめ合うようにしばらくそのままじっとする。

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