つまり、会いたいんです。
榛瑠はうっすらと微笑んでいた。金色の髪が光っているようで綺麗だな、と一花は思う。触れてみたい、と思うのに何故か動く気にならず、代わりにもう一度名前を口にした。
「榛瑠?」

榛瑠は指先で一花の顔に触れた。確かめるように目や頬や唇一つ一つにそっと、優しく。

一花はもう一度名前を呼びたくなったが、漏れたのは声というより吐息だった。

「かわいいね」

なに?

「あなたの言葉を借りれば、久しぶりだからかな。……すごくかわいい」

自分の視線のすぐ先に榛瑠の微笑みがあった。優しくてとろけるような。

一花は胸がいっぱいになって、息が止まる気がして目をつぶって手で顔を覆った。

ムリ。なんか、もう、無理。

「やだもう」声になる。なんか、あふれる。「もう無理。帰りたい……」

「……へえ」

一呼吸置いて返された声の低さに一花は目を開ける。
さっきとは表情が違う男がいる。ずっと意地悪だ。

「お嬢様のわがままは相変わらずですね。まあね、本気で帰るって言っている訳じゃないでしょうけど」そのままソファの上に押し倒される。「気に入らないな」

そのまま少々わがままなキスをされる。

< 22 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop