つまり、会いたいんです。
「だって、しょうがないじゃない!だって、あなたがお腹空かしてきてって言ったから、朝食も控えめにしたし!」

榛瑠は声を出さないように我慢しながらも、まだ笑っている。

「もう!笑わないで!」

一花は恥ずかしさと憤りをどこに向けていいかわからなかった。駄々をこねている子どもみたい。ついでに情けないことに涙まで滲んでくる。

「ごめん、ごめん」

まだ笑いの余韻を残しながら言うと、榛瑠は一花を抱きしめた。

そして今度はもう少し落ち着いた声で言った。

「ごめんね。お願いを聞いてくれてうれしいですよ。ご飯食べよっか」

「……うん」

下を向いて小さく言う。と、いきなり再び横抱きに抱えられた。

「え?今度は何?」
「テーブルまで運ぶだけですよ」

テーブルまでって、ほんの少しじゃない。
「少し甘やかしすぎじゃない?」

うれしいけど。

「今日は特別。ずっとじゃないから、気にしないで」
榛瑠は食卓の椅子の横に一花を下ろしながら言う。

「えー。ずっとでもいいよ?」

榛瑠は微笑んで一花の頭にポンと手を置くと、食事の準備にかかった。

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