前世が猫の公爵は令嬢に撫でられたい
それから、たまに窓が開いてるときにエレーヌの部屋に行った。でも寒くなってくると、“病弱なおねえさま”の部屋の窓はきっちりと閉じられていて、僕はエレーヌの部屋に行けなくなった。

エレーヌの優しい手が恋しくてたまらない。

我慢の限界が近づいていたある日、夜遅く、“おねえさま”の部屋の扉があいた。

何だろうと思って、開いた扉から顔を出すと、いつもエレーヌの横にいる人間が立っている。


「エレーヌ様がお待ちですよ。」

この人間はなかなかいい人間だ。エレーヌの次に優しい手の持ち主だし、何よりエレーヌはこの人間といるときよく笑う。確か、エレーヌはソフィーって呼んでた。


僕が廊下へと出ると、ソフィーは扉をそっと閉めた。その後エレーヌの部屋のほうへと歩き出した。僕はその後を追った。


行先はやっぱりエレーヌの部屋で、扉を開けると、エレーヌは驚いた顔で僕を見た。
僕は、エレーヌの腕の中に飛び込む。

「エル?どうしたの?」

「私がお連れしたんですよ。最近、マチルダお嬢様の窓の鍵はかかっておりますからね」

「ソフィー・・・」

「全く、年頃のお嬢様の猫との逢瀬をお手伝いするとは思いませんでした。」

「猫が相手でも逢瀬って使うのかしら?」

2人は何が面白いのかクスクス笑っている。

失礼だな。僕は立派な大人の男なのに。


まぁ、ソフィーの手伝いもあって、僕とエレーヌの秘密の夜の逢瀬は続けられた。
< 11 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop