前世が猫の公爵は令嬢に撫でられたい
「お父様!」


小さい人間は、また誰かに向かって叫んだ。


「アメリア、一人で走って行ったらダメだろう。」


今度近寄ってきたのは、見たことのない人間のオスだ。その人間のオスはエレーヌの横に立った。

エレーヌが人間のオスのほうを見た。


「ジョシュア・・・」


その時のエレーヌの顔を見て、僕はわかってしまった。このオスはエレーヌの番だ。
それがわかったときの気持ちをどう説明すればいいだろう。

安心?嫉妬?わからないけど、自分が思ってるよりも僕は複雑な気持ちになれる生き物だったらしい。


「お父様!私、この猫ちゃん飼いたい!」

「え?この猫を?」


人間のオスは僕を見た。その視線はあなり好意的ではない。

自分でもわかっている。僕はもう人間にとって魅力的な猫じゃない。
若くもなければ、綺麗でもない。

でもね、言っておくけど、僕だって君のこと好きじゃないよ。
初めましてだけどね。


「ねぇ、ジョシュア、私からもお願い!」

「え?猫なら知り合いのことろに子猫が産まれるらしいからそっちにしたら?」

「えぇ~この猫ちゃんがいい!」

「私もこの猫がいいの!」


まさかの2人からのお願いに、人間のオスは驚いている。そしてもう一度、僕を見た。
それからため息をついた。

「わかった。でも、帰ったら、まずその猫を洗うところから始めないとね。」


「やった!お母様!やったね!」

「えぇ!」


どうやら人間のオスよりエレーヌと小さい人間のほうが強いらしい。


こうして僕はもう一度、エレーヌの猫になった。

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