戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
「な、何よ急に…」
右腕を掴まれたまま、本棚に背中がぴったりくっつくほどに距離を詰められ、戸惑いを隠せない。
「ん、これだろ、さっきまで探してた資料」
すると、次の瞬間、視界に映されたのは、村雨くんのドアップじゃなくて、ほんの数分前まで私が探していた目的の資料だ。
どうやら、先ほど背伸びまでして取ろうとしていた私の哀れな姿を、村雨くんにバッチリみられていたらしい。
「あ、ありがとう…でも、こんな強引に引っ張らなくても、って…村雨くん?」
目的の資料と代わりに取ってくれて、素直に感謝を伝え、顔をあげた。
そこには、メガネを外し、うざったそうに前髪をかきあげる彼の姿が至近距離に。
「なんだよ」
「ど、どうしてメガネ…それに前髪も、」
「アンタの前で小細工は不必要だからな」
小細工って
何度見ても、村雨くんの素顔には目を奪われてしまうから、できればいつもの村雨くんの姿でいてもらいたいのが本音。
今なんて、私と村雨くんの距離は分厚い資料を抱えている分だけしか空いてなくて、これ以上至近距離に迫られたら、私の心臓の鼓動が彼に伝わってしまいそうだ。
「それに、好きな女落とすために、あんなダサい格好できるかよ」
「すっ…?!」
好きな、女!?
あまりにもドストレートすぎる告白に、いよいよ平常心を保てなくなっていく私。
落ち着け、と自分を保とうとするけど、急な甘い展開に体は正直に赤く染まり始める。
「そう簡単には逃さないっつったろ」
村雨くんの言葉に、私はあの夜のことを思い出す。
確かに、言われた。
覚悟しとけ、とも言われた。
あの時の村雨くんの言葉の真意に気づいた瞬間、体温がさらに上昇していくのを感じずにはいられなかった。