戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
「真っ赤」
「言わないでっ」
人生で一番顔が赤くなってることは、鏡なんて見なくたってわかってるから、指摘しないでほしい。
恥ずかしくて堪らなくて、資料で顔を隠そうとするも、腕を掴まれたままだから、身動き一つ取れなかった。
「隠すなよ。せっかく可愛いもん見てるのに、もったいねーだろ」
「す、ストップ!それ以上は心臓もたないって!」
可愛い?!
恋愛慣れしてないだけなのに、どうしてそんな甘い言葉が返ってくるの!
外見も言葉遣いも、いつもの村雨くんと正反対で、ギャップ萌え効果を全身で浴びている気分だ。
変わらないのは、正直すぎるストレートな言葉だけ。
「村雨くん、キャラが違いすぎるよ…」
「アンタに意識してもらうためなら、手段は選んでられないからな。アンタが降参っていうまで、諦めないから」
私が降参するまで?
それって、村雨くんを拒否する選択肢ないじゃない。
「そんな勝手な…」
「それより、今週の土日、アンタ暇か?」
「え?…これといった予定はないけど」
正直に休日の予定を口にしたところで、思わず固まる。
しまった、これってデートに誘われるやつ?
村雨くんと?
いつものモサモサな村雨くんじゃなくて、今目の前にいるキラキラな村雨くんと?
私の心臓、耐えられるかな…。
なんて、独りよがりな妄想をし終えた時だった。
「ふーん。そう。…そろそろ戻らないと主任に疑われるな。帰ろうぜ」
「え、ちょっと…?」
聞いただけ?
休日の予定だけ聞いて満足したようで、前髪をおろしメガネをかけ、普段の村雨くんに戻った彼は、クルリと私から背を向けてしまう。
そのまま資料室を出て行こうと足を進める村雨くんにハッとして、私もその後を追いかけた。
「あ、伝えるの忘れてました。その資料を主任に預けたら、その足で篠塚部長のところへ行くようにと伝言です」
「え、篠塚部長?うん…わかった」
人事部へ戻るエレベータ内で伝えられた言伝。
部長から呼び出しなんて…私、業務で何か大変なことしでかしちゃったの?
そんな不安な気持ちを抱えている私の隣で、村雨くんが小さく口角を上げていたなんて、この時の私は知る由もなかった。