戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜


「常であれば、私も同席するんだが、今回は特殊でね」

「と、言いますと?」

「先方から、縁談形式に進めたいが、顔合わせは一対一が言いそうだ。だから、今週の土曜にその老舗料亭に行くのは君と、先方の御子息だけということだ」


そんな…。

幸か不幸か、堅苦しい形式の縁談ではないらしい。

でも、顔も知らない人と初めて会うのが2人きりというのも不安が募る。

そもそも、私は男性に対して免疫はない方だし…。


「あまり気難しく考えずに、食事に行くだけと捉えて、縁談に応えてくれないかね?悪いようにはしないから」

「…部長は、先方の御子息とは面識があるのですか?」

「それはもちろん。彼は好青年だし、何より正直者でね。私は、彼のようなタイプは結婚などせずに、独身を貫くものだとばかり思っていたが…今回、君と引き合わせて欲しいと頼まれたときは、本当に驚いたよ。決して、悪い人間じゃない。信頼がおける人間だ」


毎年、人事部長として何千人という就活生と向き合っている部長からみた意見だ。

信用がおける人間なのは、本当のことなのだろう。


「…わかりました」

「北川さん、この縁談受けてくれるのか!」

「はい。…ですが、失礼を承知ですが、私としましては乗り気ではないことを念頭に置いていただけると助かります。今回は…部長が仰るとおり、美味しいご飯を食べに行くということで、お受けいたします」

「ああ。さすがに北川さんの本音を先方には伝えにくいが、会いに行ってくれるだけでも良い。楽しんでおいで」

「…失礼します」


はぁ、やっぱり丸め込まれちゃったな。

敗北感を感じながら、部長室を後にして人事部に戻る道を辿る。

村雨くんに、休日の予定ないって言っちゃったけど、とんでもない予定入っちゃったな…。

ま、彼に言う必要もないか、と人事部に戻ると、すぐに業務に取り掛かった。


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