戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
村雨くんから、両親の了承を得たって聞いた瞬間、お母さんが開口一番に頷いたんだろうことは簡単に想像できた。
「お母さんはそれで良くても、お父さんが…」
「あら〜パパも乗り気だったわよ?パパは昔からお金持ちのボンボンなんて毛嫌いしていたタイプだけど、律さんの紳士な人柄と、いっちゃんを大切に想う気持ちに考えを改めたのね〜!律さんが挨拶をしに来てくれたその日、翌朝まで律さんを離さず夜通し飲み明けていたのはパパなんだから!」
な、なんてこと…。
この令和の時代、昭和の親父の様な頑固者のお父さんを、たった数時間で手懐けたというの?
「村雨くん、ウチの両親に何言ったの?」
自分の想像を遥かに超えた状況を認識し、私は村雨くんを呆然と見つめることしかできない。
今の私は、完全に外堀を埋められている。
完璧に。徹底的にだ。
「別に?」
「その声…いっちゃん、そこに律さんいるの!?」
「えっ」
村雨くんの返事は、通話越しの母に聞かれるほど、大きい声ではなかったはずだ。
たった3文字の彼の返事に、声の主が村雨くんだと言い当てた母のリスニング力の高さに、私は心の中でドン引きしていた。