消えた卒業式とヒーローの叫び
「良かった。じゃあメンバーは以上だから、とりあえず部の説明をするな」
何が良かったのかは理解できなかったが、上原は歩き出し、机上に並べられた機材を指差す。
「俺らの代は基本アニメを作ってる。一年の頃の文化祭では先輩がいたから、実際に人とかを撮影して映像を披露してたけど、引退したし好き勝手してる感じかな。元々緩い部活だし、顧問もほぼ来ないから、こんな感じ」
上原はカメラに語りかけるように話していた。あとの二人も適当に頷いている。
そうか、だから私は映画研究部の存在を二年の文化祭まで認知していなかったのだ。
ぼんやりと、一年の頃に見せられた映像を思い浮かべる。映画研究部とはいえ、演技力までは研究しきれなかったのか、棒読みの嵐で、膝に顔を埋めている生徒が続出していたことを思い出した。
あの頃から、アニメも作ることができると知っていれば良かったのにという考えが過ぎるも、このメンバーに自ら紛れに行くのは無理があると悟った。
「コンテストの情報も一応入ってくるから、それに出すのもあり。あと、ここで映画見て意見を言い合ったり、普通に研究したり、実際に映画を見に行くこともある」
そう言い終えた後、上原は「あ」と声を漏らし、何か大事なことを思い出したかのように壁にかけられたカレンダーを見た。