新たな恋の始まり



「いらっしゃいませ」
お店の人はすぐに駆け寄ってきた。


「お気になった品物がありましたら
試着してみてくださいね」


「あれ!ちょっと見せて」
あれと言うのはウインドに飾られていた服。


「ちょっと!課長!」
「着るだけ着てみればいいだろ」
「でも時間もないし」
小声のやり取りに
「お似合いのカップルですね
彼女さんへのプレゼントですか?」と
話の内容は聞こえてないけれど
密着して話してるのが仲良さそうに見えたと言う。


密着してないですけど???
と思いながらも試着室に通され
さっきの服を試着することになった。


サイズ的にもピッタリ
「欲しい!」と思ったがすぐに脱いで
試着室から出ると
「はぁ?見せねーの?」って
不満そうに課長が言った。


「そこは
どう?見て?似合う?
クルクルーと回って見せるんじゃないの?」


「ふふっ」
本物のカップルならそうしますけど
ただの上司と部下だから。


「お気に召さなかったです?」


「いえ 可愛かったです!」


「ですよね!
きっとお似合いになると思いました!」
店員さんは押せ押せと勧めてくる。


「見せるのが恥ずかしかったんですかね?
彼氏さんどうです?
きっとお似合いですよ」
と課長に買わさせようと迫る。


「でもまた今度にします」
と私が言うと
「今度と言ってもその時に
在庫がない場合ありますし」
とああ言えばこう言うと言う感じで
こう言うタイプの人は苦手だ。


「その時はその時で
縁がなかったと思って
他のものを選びます」
少し感じ悪い言い方をしてしまった。


「課長!!!
先急ぎましょ!
会議に遅れると困りますよ」
と課長を強調した。


「あ•••恋人同士じゃなかったんですねー」


「そうです!」


「失礼しましたー」


お店を出るとすぐに
「別にそのまま恋人で流せば良いのに」
と課長が言った。


「私は良いですけど
課長には迷惑な話ですよね
恋人だなんて
それにあたしはあんなに
付き纏う店員さんって苦手なんですよ
ゆっくり見たいタイプなんで
あの服は可愛かったですけどね」







< 16 / 22 >

この作品をシェア

pagetop