だれよりも近くて遠い君へ
篠崎さくは、不機嫌そうに少し前を歩いている。
高い背と、少し猫背な姿は、全身から機嫌が悪いことを示している。

ずっとずっと小さい時から、一緒にいるのに、最近はさくのこと全然わかんない。

朝は、玄関の前に私が出るよりも先に、絶対に居て一緒に学校に行く。
高校生にもなって、なんで幼なじみと一緒に、学校に行かないと行けないの。

足の長さだって違うから、こっちはいっつも必死についていってるのに、少しも気付いてないよね?

時々後ろも向かずに、

「遅いんだけど」

の一言だけ。なんなの本当に、

「先行っていいよー、コンビニ寄っていくからー」

笑顔で、バイバイと手を振って踵を返して、コンビニに向かう。
ちょっとぐらい学校遅れても、成績優秀な私は大丈夫だもん。さくは多分、絶対アウトになるから、さすがについては来ないはず。

赤点ギリギリのさくは、授業遅れたりしたら、ほんとに単位あぶないの。
要するにすごいバカってこと。

私は、カバンからイヤホンを出して耳に差し込む。
深く深く入れたら、大好きな曲を流す。
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