愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「元は主人とあなたのお父様の公平さんの諍いでしょう。公平さんも榛名の家には嫁がせないと言っているわけだし、あなたが意地を張らずに佑と別れると言ってくれればすべて丸く収まると思わない?」

昼間、父と対峙した時とは違う感情が湧いてきた。怒りではない。そう、諦観に近い感情だった。この人たちには何を言っても通じないのだ。
丸く収まるのは双方の親だけで、私と佑の気持ちを完全に無視している。そのことに気づいていない。どこまでも、私たちは親の付属品なのだ。

だけど、もうその付属品ではいられない。
この人たちは知らないけれど、私のお腹には私と佑が命を懸けて守らなければならない存在がある。

「おばさま、お話がそれだけでしたら、私は帰ります」
「咲花ちゃん」
「わかってもらえないかもしれませんが、佑と私は親への反抗心で一緒にいるわけではありません。愛し合っています。親であっても引き裂く権利はないと思います」

カフェオレ分の千円札をテーブルに置き、席を立つ。

「待って、咲花ちゃん」

おばさまが腰を浮かせた。同情を誘うような声音だ。

「あなたたちはいいかもしれないわ。でも、陸斗の経営が立ち行かなくなったとき、いったいどれだけの人が露頭に迷うと思っているの?佑を陸斗から奪うということがどれほど大きなことか考えてちょうだい」
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