愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました
「佑といたい」
「俺も咲花といたいよ」

佑がどうしたというように私を覗き込み、頬を撫でてくれる。

「咲花、何かあったか?」

私は唇を噛みしめ、数瞬黙った。言おうか逡巡する。ここで隠しても仕方ない。

「おばさまと会った。佑に陸斗をやめてほしくないから……だから……」
「別れろって言われたか?」

頷いた拍子に涙がこぼれた。ぼろっと溢れた涙はぱたぱたと膝に落ちる。

「佑が陸斗建設をやめて、会社の経営状態が悪くなったら、たくさんの人が困る……。わかってるよ」
「咲花、落ち着け」
「だけど、……だけど、私も困るよ。私とお腹の赤ちゃんも、佑がいなかったら困るんだよ」

涙する私に、佑が手を伸ばした。
引き寄せられ、ぎゅうと抱き締める優しく力強い腕。大丈夫というように背を撫でてくれる。

「同じ土俵で考えなくていい。会社なんか、俺がいなくても回る。俺も、いっそ社長の親父だって陸斗建設のピースのひとつだよ。会社はひとりで持ってるものじゃない。たくさんの人間の努力で成り立ってる。でもな」

佑が私の頭を撫で、間近く見つめて微笑んだ。

「咲花の夫と、お腹の赤ん坊の父親は俺だけだ」
「佑」

ぎゅっと目を瞑ったら、涙がまとめてぼたぼたと落っこちた。
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