もっと秘密なラヴシークレットルーム 日詠医師の溺愛ぶりは糖度高めで要注意?!


彼女の夢のために彼女との未来への道においては立ち止まっていたままの俺だったけれど
もう、彼女のために立ち止まって足踏みしている必要はない

彼女がもっているであろうピースを一緒に手に取り嵌めこむんだ
彼女と俺の未来のスタートという新たなパズルを完成させるために

そう思わずにはいられなかった俺は院内の臨床心理室に積極的な産科診療への協力を促し始めた
そして、いつかどこかのタイミングで、臨床心理士になった伶菜を引き寄せることができる環境を作るためにも遺伝相談チームというものも作った
その時は伶菜がどこに就職するかも知らないどころか、本人に会うことも叶わなかったのに・・だ

先天性心疾患を有していた祐希の出生前診断を経て出産を経験した伶菜
先天性疾患の発症については原因不明のものも多いが、遺伝要素が関わるケースもある
祐希の妊娠、出産、育児を経験している伶菜はきっと、今後、同じような境遇に出くわした妊婦達の支えになれる・・・そう思ったから




「入職の前日って・・・聞いたことない人事異動だな。」


それから1年で、臨床心理士になった伶菜を引き寄せるチャンスを失いかけていることを知った俺は病院内の人事権なんて持っていなかったくせに、俺が欲しがっていたピースを持っているであろう公の伶菜を手に入れるために動かずにはいられなかった


「だから、伶菜は城北病院へ行ったんだな。初日に。前日に本人に連絡できなくて。」

『ああ・・・たった1日、正確に言うと前日夜に人事がひっくり返った。』

「ひっくり返ったじゃなく、ひっくり返した・・だろ?黒幕はあんただろ?石橋を叩いて渡るタイプの日詠さんが、電光石火の如く、人事を動かしたことはさすがの俺も驚いた。」

『俺自身も驚いた』

「以前は、そこまで他人に執着しなかったくせに。」

『他人じゃなく・・・運命の人・・・だからな、伶菜は。』


実際に再会した公の伶菜
臨床心理士として目の前に立っていたその凛とした姿に、またココロを奪われた俺は
私の伶菜までも手に入れた


運命だったんだ
様々な困難があったけれど
伶菜と俺は一緒に未来の道を歩む運命

その運命は現在進行形

間違いなく俺は幸せだ
俺と同じくらい、いや、それ以上に伶菜も幸せだといいなと願う



「くそ~、惚気かよ~。相変わらず、日詠さんってば、やなヤツ!」



そんな俺の惚気に付き合わせてしまった森村は吐き捨てるようにそう言いながら、俺の弁当箱から伊達巻を摘み上げ、ニヤリと笑ってから逃げるように俺の前から去っていった。

椎茸だけでなく、もうひとつの俺の好物である純平直伝伶菜お手製の伊達巻までも奪われたから、本人に言うのをやめた。
”伶菜と別れて、足踏み状態だった俺の背中を押してくれたのは、森村、お前だったんだ”という言葉を。

彼女がいなくなった日々に、俺を支えてくれた人達のひとりでいてくれた森村
彼に悪態つくことなく感謝の言葉を伝えられる日は
まだしばらく来なさそうだ。

森村と俺
これからも公私ともに切磋琢磨できるライバルで居続けるに違いないから。


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