一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~


「この前、約束したの覚えてる?」


拓海が実花子を送ったときのことだ。
食べ物につられて大きくうなずく。実花子も相当簡単なものだ。


「よし、それじゃ、仕事が終わったら下に降りておいで」


実花子が誘いに素直に応じるのは、おいしいものが目の前にぶら下げられているからにほかならない。なにより、自分にもっと幻滅してもらうという任務がある。

拓海はにっこり微笑むと、実花子の頬をひと撫でして立ち去った。

どんなおいしいものを食べさせてもらえるのだろう。目の前にぶら下げられた魅惑的な〝エサ〟を思うと、ついあれこれ考えて顔が綻ぶ。

ただ、実花子には拓海の求めていない女性を演じなくてはならない使命があると思い出すと、その高揚感も少しだけ薄れた。

仕事を定時で終えて下へ降りると、ビルのエントランスの真正面になんの躊躇いもなく停車した車が見えた。スポーツタイプの濃紺の高級車だ。美しく洗練された車体が、灯りはじめた街のネオンを乱反射させている。

車種を聞いていたわけではないが、きっと拓海の車だろうと直感的に思った勘は見事に的中。
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