一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「言わなきゃ、ずっとこのままだよ」
それはとても困る。
なにも『好き』と言えと迫られているわけじゃない。ただ単に名前を呼ぶだけでいいのだ。恐れることはなにもない。生唾をごくりと呑み込む。
「……た、くみさん」
「聞こえないよ」
ボソボソと言ったがために却下された。こうなったら破れかぶれだ。
「拓海さん」
今度は今度でケンカ口調になったのは否めない。拓海は一瞬目を点にしたあとプッと吹き出した。
笑わなくてもいいだろうにと、実花子は細い目をして睨む。
なぜだろう。下の名前で呼び合うと、親密さが一気に増したように感じる。なんて厄介なトラップだろうか。
釈然としない実花子の横で、どこか満足そうな笑みを称えながら拓海は再び車を発進させた。