一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
常連なのか、男性スタッフは拓海の顔を見るなり「お待ちしておりました」と丁寧に頭を下げた。いったいどれだけの女性を連れてきただろうかと、妙な勘繰りをしたくなる。
案内された個室の大きなガラス窓の向こうには、星屑を散りばめたような景色が広がっていた。夜景が特別好きなわけではなくても、自然と「わぁ……」という感嘆の声が漏れる。三十階という高層階から街並みを見下ろすのははじめてだった。
男性スタッフが引いてくれた椅子に腰を下ろしてからも、メニュー表には目もくれずにキラキラと幻想的な光を見つめた。もっとも、メニュー表を見たところで料理がわかるはずもない。チラリと横目で見たそれは、すべてフランス語だったのだ。
「勝手に頼んじゃうけどいい?」
「はい」
そうしてもらわなけらば逆に困る。肉料理がふたつ並ぶのが関の山だ。
拓海は慣れた様子で注文を済ませた。
「ここ、よく来るんですか?」
「〝来るんですか〟?」
最後の〝ですか〟を強調して首をかしげる。言いたいことはわかっている。敬語をやめろというのだ。