一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~

思いがけず声を掛けられたため手は枝を掴み、足は大股開きで木の幹に掛けたまま、はたから見たら滑稽な体勢で彼を見る。

でも即答できなかったのは、人が突然現れたからだけではなかった。
太陽の光で透けそうなサラサラの髪の毛。それと同じように色素の薄い、知的で温和な瞳。左右対称の切れ長な目もと。厚くも薄くもない、形のいい唇。その男性は容姿端麗なばかりではなく、まとうオーラも爽やかだった。

一瞬ここが公園ではなく、晴れ渡った浜辺で心地の良い海風を感じていると錯覚するほど。

――王子様。
そう形容するにふさわしい男性だった。ほかに言葉を知らない自分はなんと愚かだろう。

つい見惚れてボーっとしていると、その男性の瞳が不審そうに揺れはじめる。彼の眉毛が僅かにつり上がり、実花子は「あの風船を」と空を指差した。


「あれを取るつもり?」


いったん空を向いた彼の視線が、再び実花子に舞い戻る。


「はい……」
「女性はそんなことをするものじゃないよ。俺に任せて」
「えっ?」
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