一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~

ドラマのようにおとりを使う展開が実際にあるとは。とてもじゃないけれど、普通についていける話ではない。

拓海が無事なだけでも頭の中は大混乱。そのうえ、この事件にはまだ続きがあるなんて、どう処理したらいいのかわからない。
でも、ここにいて本当に大丈夫なのだろうか。


「そんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫。ここは安全だから」


拓海が実花子の髪を撫でる。
たしかにこの部屋の外には筋肉のよろいをまとったような男がふたりいて、どんなものからも守ってくれるだろう。


「でも、実花子がそんなに心配してくれるなんて思わなかった」
「そ、それは拓海さんが重体だって」


もしかしたらもう会えないかもしれないと思ったら、失う恐ろしさに体中が震えた。居ても立ってもいられず、心が拓海を追いかけていた。
もうごまかせない。実花子は拓海を好きなのだ。

自覚した途端、再び涙が頬を伝う。自分がこんなにも涙もろいとは知らなかった。
最後に泣いたのは両親を亡くしたとき。それから六年間、涙腺に栓をしたかのように一滴も出てこなかった。
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