一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~


実花子には、拓海を変えられないのだ。


「拓海くんはね、幼い頃に母親に捨てられたんだ」
「……え?」
「男の人を追って、出て行ったそうだ」


思いもよらない過去だった。


「ずっと父親とふたりきりで暮らしていたらしい。そういったことも拓海くんの心に影を落としているんじゃないかな」


拓海の言葉を思い出した。


『愛なんて存在に目が向くのは最初のうちだけだよ』


それは、母親に捨てられた過去があるからこそなのかもしれない。いずれなくなる愛情なら、最初からないほうがいい。そうすれば傷つかずに済むから。

そうかと思えば、『早く俺を好きになれ』と愛を求める。愛情をどこかで欲しながら、それを抱える怖さから逃げている。拓海の中には、相反するものがせめぎ合っているのかもしれない。
白鳥は最後に「拓海くんをよろしく頼むよ」と私の肩を軽く叩き、見送った。
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