一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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「あの、ちょっとよろしいでしょうか」
実花子が声を掛けられたのは、午後三時を回り、みんなが思い思いにコーヒーコーナーで飲み物を用意しているときのことだった。それが真里亜だけに、なんだろうかと身構える。
小さくうなずきながら「はい」と答えると、真里亜は右手で拓海が社長室として使っている部屋を指差した。彼女を追いかけるようにしてついていく。
スッと伸びた背筋、美しい歩き方、微かに香る甘い匂い。うしろ姿だけで美人だとわかる。これが同じ女性の姿なのかと、自分と比較して落ち込むほどだった。
真里亜は社長室へ入ると、外から見えないようにすべてのブラインドを下げた。
「突然すみません。上原さんなら、椎名社長の容態をご存知だろうと思って……」
秘書である真里亜にも、真実は告げられていないようだ。不安たっぷりの潤んだ瞳で実花子を見つめる。
おそらく拓海の事件を聞いてから今まで、仕事も手につかなかったに違いない。
千沙の言っていたとおり、ただ単に上司を心配している顔ではない。真里亜は拓海を好きなのだ。