一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
〝だった〟? 過去形だ。
「実花子と一緒にいるのが楽しくて。いつの間にか単なる道具とは思えなくなっているのに気づきながら、そんなことはないと打ち消してた。でも、あの事件が起きて、ホテルに駆けつけてくれた実花子を見て、失いたくないって強く思った。こんなにも心配してくれる人が俺にもいたんだって」
実花子もそうだった。自分の気持ちに薄々気づきながら、それを必死に否定していた。あの事件が決定打になったのだ。
拓海が実花子を見て戸惑っていたのは、よく覚えてる。
母親に捨てられた過去が、自分は誰にも心配されない存在だと思わせていたのかもしれない。
「……あのとき私もそう思いました。拓海さんにもしものことがあったらって考えると、すごく怖かった」
でも心配していたのは、実花子だけではない。真里亜も同じ。
「みんな心配していました。社内の人たちだって。きっとほかの人たちもそう。拓海さんはひとりじゃないです」