一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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お昼から戻ると、拓海から社内メールが届いていることに気づく。珍しいなと思いつつマウスポインタでクリックすると、『話したいことがあるから、仕事が終わったら下で待っていてほしい』と書かれていた。
訴訟問題が解決したという報告かもしれない。詳細はべつとして、なんでも話してほしいとお願いしてからというもの、拓海はなにかにつけて実花子に話してくれるようになっていた。
なにげなく視線を向けた社長室はブラインドが下ろされていて、中を窺い知ることはできない。そのメールに『分かりました』とひとことだけ返信して、実花子は再び業務に戻った。
定刻どおりに仕事を終えて階下へ行くと拓海の姿はまだなく、しばらく待つつもりでエントランス付近の柱に体をもたれかけた。
季節はすっかり梅雨。晴れていても感じる湿気は、さすが夏間近である。今も、エントランスの自動ドアが開くたびに生暖かい空気が入り込んでくる。
そのガラスドアから見上げた空は、太陽が光を引き連れて地平線へ沈もうとしているせいばかりではない暗さを抱えていた。よく見えはしないものの曇っているようだ。
この空気の感じだと、ひと雨くるかもしれない。そんなことを考えながら待っていると、ドアの向こうに一台の車が停車した。
黒いワンボックスカーだ。拓海の車ではない。