一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
多くのM&Aを手掛ける白鳥の目を欺くのだから、よほど巧妙に仕掛けたのだろう。
「賠償金なんて払えない。そのうえM&Aまで解消されたら、うちはもうやっていけない」
破れかぶれでこうして実花子を誘拐したのか。
でも、拓海がその条件を飲むとなれば、賠償金の支払いも工面しなければならないうえ、大里の会社の経営まで責任を持つしかなくなる。――実花子がここにいるばかりに。
大里は気の毒だとは思うけれど……。
ふと、どこか遠くのほうからサイレンのようなものが聞こえたような気がした。大里にも聞こえたらしく、顔を上げて耳をそばだてるような仕草をする。
パトカーのサイレンに聞こえなくもない。でも、ここに向かっているはずはない。大里以外にここに実花子がいるのを知る人はいないのだから。
それならば今すぐここを飛び出して、そのパトカーまで走ろうか。さっきは失敗したけれど、今度はうまくいくかもしれない。ここから脱出できれば、拓海はなにも被らなくて済む。
ドキドキと嫌な緊張に鼓動が高鳴る中、遠くのほうで不意にサイレンの音が消えた。
聞き耳を立てている大里の様子をこっそり窺いつつ、気づかれないようにジリジリとドアに向かって移動する。