一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
「い、いえ、大丈夫ですから」
人の分まで横取りするほど食い意地は張っていない。それに、そのスプーンのままでは間接キスになる。さすがにそれは避けたほうがいいのではないか。
「あ、そうか。ごめん、俺も気が利かないよな」
拓海は苦笑いをしながら、カトラリーケースに残っていたスプーンを実花子に差し出した。
「……はい?」
「間接キスはまだ早い」
拓海も同じことを考えていたのかと思うと、一気に恥ずかしさが込み上げる。しかも〝まだ早い〟と。つまりこの先は〝する〟つもりなのか。
余計な方向に妄想が暴走して、実花子ひとりで勝手にドキドキと鼓動が速まる。
やだな、なに考えるの。そんな意味のわけがないでしょ……!
ひとりであたふたとしていると、拓海は「はい、どうぞ」と〝あーん〟とばかりにスプーンを実花子の口もとに近づけてきた。
その誘惑に打ち勝てず、飛んでいる虫を舌で瞬時に巻き取るカメレオンのように反射的に口を開く。そこに容赦なくスプーンが飛び込んできた。