一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
その形容詞に間違いはない。まさしく男っぽくサバサバ。化粧っ気もほとんどない。
それでは本気で実花子を好きだと言うのだろうか。
異常な速度で打ちはじめた鼓動を持て余すなか、拓海が実花子へ近づく。うしろは壁。両脇にあった逃げ道は、伸ばされた拓海の腕によって塞がれた。実花子の退路は完全に奪われる。
「恋人になった記念日」
拓海の手が実花子の顎に添えられる。そのままそっと持ち上げられると、彼の顔が近づいてきた。
――逃げなきゃ。
拓海の胸を突き飛ばせばいいのに、体が硬直して動かない。まるで金縛りにでもあってしまったように瞬きすらできなかった。
そうしているうちに、ふわりと唇が重なる。それはゆっくり一から三まで数えるくらいで離れていった。
「それじゃ実花子、またあとで連絡するよ」
いきなり呼び捨て。王子様スマイルを浮かべ、椎名は呆然とする実花子を置き去りにして部屋を出ていった。
今のなに。キスだよね……?
昨夜ももしかしたらしたのかもしれないが、その記憶はすっぽり抜け落ちている。
ふにゃっというたった今の感触を思い出し、止まっていた時間が動きだす。
嘘でしょ……!
残された熱を拭い去るように、実花子は唇を手で乱暴にこすった。