一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
本当に参っているようには見えない。余裕綽々の王子様スマイルだ。
とにかく今夜はもう帰ってもらおう。
「椎名さん、タクシーを待たせてますよね?」
「そうだったね」
実花子の言葉にやっと帰る気になったらしい。拓海は玄関へ足を向けた。
祐介がそろえた靴を履き、彼が振り返る。
「どうしたら機嫌を直してくれる?」
「それなら、私と結婚するのを考え直してください」
それが第一希望である。平穏無事な日々を返してほしい。
「それはダメ。考え直すとしたらキミのほうだよ。絶対に俺に振られてみせるなんて。それじゃ、こうしよう。今度おいしいものを御馳走するよ」
その言葉に心がぐらぐら揺れる。思わず顔を綻ばせると、拓海は満足そうに笑った。
素直に喜んではいけない場面に大失態だ。
「それじゃ、おやすみ」
拓海は実花子の頬に手を添え、またしても不意打ちのキスをする。実花子の逃げ足が遅いのか、彼が早業なのか。
拓海は実花子の髪を撫でると、優しい笑みを残してドアの向こうに消えた。