一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
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拓海と形ばかりの付き合いをはじめてからおよそ一週間が経過した。
「彼、来てるよ」
千沙がすれ違いざまに実花子にそっと耳打ちをしたのは、ランチから戻ってきた通路でのことだった。
通りすがりにあるガラス張りのミーティングルームにいる拓海を指差す。ふふふという意味深な含み笑いはやめてほしい。
なんの合図なのか実花子の背中をチョンと突くと、千沙はスキップでもしそうなほど軽やかな足取りで去っていった。
昨夜、拓海から掛かってきた電話でここへ来ることを聞いていたため、さして新鮮な情報ではない。たしか傘下に入るにあたり、メディアテックの幹部との打ち合わせがあるとか。
コの字型にした長テーブルを十数人で囲み、ロールスクリーンに映し出された資料で討論をしている。壁に遮られて声こそ聞こえないが、そこにいる彼は真剣そのもので、実花子が見たことのあるどの顔とも違っていた。
……あんな顔、するんだ。
千沙に見せられた雑誌に載っていた拓海も、今のような表情をしていたと思い出す。思いがけず目撃した、真摯で熱いまなざしからなぜか目が離せなくなる。