皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「どうしたの、ユゼフ」

「いや、お前に諭された日のことを思い出して」

「……あの時は情緒不安定だったの、ごめんなさいね」

「ルイーズにああやって叱られなければ、受け入れられなかった。愚かなのは自分だと、理解するのが遅かった私が言うのもおかしな話だが……」

気づいてしまった。

イリスは皇女として考えれば、恐らく確かに平凡なのだろう。

少しワガママな気質ではあったけれど、それは子供特有のものと呼べる範疇だった。ルイーズの言葉を疑うわけではなかったけれど、『ワガママ皇女』なんて囁かれる彼女の悪い点を探そうとすればするほどそれらしいところが見つけられなくて驚いたほどだ。

むしろ皇后陛下の不義が本格的なものとなった頃に、ぱたりと彼女は多くの人と接触を断ったように思う。

必要な物事の際にだけ姿を見せ、それ以外は部屋で静かに過ごす。

それは一つの可能性を私に示していた。

(彼女は、……イリスは、本当は皇后陛下と共に行きたかったんだろう)

どこまでも普通な彼女は、勉学に熱意を見せているとは耳にしていても陛下のように周辺諸国に睨みを利かせることも、多くの人の目を惹きつけるようなカリスマも持っていない以上、苦労するのだろう。

優しい気持ちを持つ彼女だから、きっとみんなに失望されていることだって気づいていたはずだ。それでもそこには一度として触れもせず、泣き言一つ零さない。
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