皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「皇女殿下は、思っていたよりも聡明だと思う」

「まあ、そうなの?」

「ああ、最近教会が綺麗になったという話はしただろう?」

「ええ。なんでも寄付の品がバザーですごく人気なんですってね。侍女たちが話していたわ」

「そうだよ。それは……皇女殿下が編まれたレースだったのさ」

金銭を皇女の名前で教会に寄付すれば、効果的だったろうと思う。

次期女帝である皇女が率先して寄付をしたとなれば、大抵の貴族はそれを快く思わなくとも右に倣えで寄付を始め、そして教会はもっと早くに潤っただろう。

だけれど、彼女はそうしなかった。

「匿名でレースを贈り、販売すれば誰も傷つかないし不満は抱かない。……彼女らしい気遣いだと思う」

その名を出して貴族たちの模範となったとしても、皇帝陛下のようにカリスマを持たない彼女は権力を笠に着た皇女として貴族たちの不満を隠さない目を向けられる。

民衆は残酷だ。

良い政策を、目に見える効果を与えればいくらでも好意的になってくれる。今の皇女殿下には、なんの権力もないから民衆の好意だって結局は陛下の好意からくるおこぼれに過ぎない。

だからこそ、彼女は匿名を選んだのだろうと私は思う。
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