皇女殿下の幸せフェードアウト計画
挿話 皇帝の証言


『僕も兄上も、お互い経過はともかく愛すべき相手をこの手に取り戻した。……では、憐れなるあの少女には、何があるのでしょうね……』

弟である大公と、妻である皇后が揃って悪い病気になり手を尽くしたがそれぞれ領地で、離宮で儚くなった――正直に言うならば、それは無理があるシナリオだ。

だが、それを自分で押し通したのは……皇帝である自分だ。

それは、恐らく……贖罪の気持ちがあったのだと思う。

表向きは娘であるイリスの懇願を受けて。

だが、それを否定するかのように別れの場に赴いた先で弟“だった”男に言われたその台詞が頭にこびりついて離れない。

プライベートで使う一人称で話してくれたことにほっとしたのも束の間、弟から発せられる言葉は痛烈だった。

兄として別れを、直接言いに行った時のことだ。

『せめて息災で、というのは……おかしな話か』

『いいえ。まさかお見送りに来てくださるとは思いませんでした』

『お前は男としての機能を失い、これよりは身分を剥奪され、こちらが指定した建物であの女と生涯を生きるのだ。幽閉と何も変わらない』

『それでも、愛した女性と共に生きられる』
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