皇女殿下の幸せフェードアウト計画
その言葉に、何も返せなかったのはそれが真実だったからだ。

愛する女性を見つけた。

その人と別れた。

だけれど、彼女が子をなしたと連絡をしてくれた時には天にも昇る気持ちだった。手紙を届けてくれたのは商人だったがその身元は調べても後ろ暗いところはなく、その商人もまた歌姫である彼女の支援者だったというから納得だ。

歌姫ラエティティア、美しい人。

最古の国と呼ばれ歴史ある大国といえば聞こえはいいが、落日の国などと比喩されるアハティア王国の没落した貴族の出身と教えてもらった時にはなるほどどうしてと思ったものだ。

その彼女と恋に落ちただけでも幸運だったというのに、国のため婚儀を上げた後、愛妾として迎え入れることができるだなんてどれほど幸運に恵まれているのだろう。

幸いにも皇后である彼女も支援者の一人であるから諸手を挙げて賛成してくれたほどだ。

(だというのに、無残な事故によって失われてしまった)

初めての子も、愛する人も同時に。

その喪失感は、言葉になどなろうはずもなく。失意のどん底にある姿はおそらく廃人のようにすら見えたのだろう、そんな中皇后が犯人ではなどというふざけた噂が飛び交ったとしても、何一つ動けなかったのだ。
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