皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「……でも、皇女になることなんて、考えていなかったのよ。家族がいたっていうだけでよかったのに、私に本当にそんな資格があるのかって思うわ」

「お姉様は、皇女として迎えられるべきです! 堂々と、私たちの家族として名乗りをあげられるではありませんか!」

「……イリス……」

「皇女としての務めは、今考えずともよろしいのではないでしょうか。……私は、どこにいてもお姉様のことを堂々とお姉様と、お呼びしたいと思っております」

リリスも不安だったんだ。

それがわかって私はなんてことだろうとショックを受けていた。

「ありがとう、イリス」

「……いえ」

嬉しそうな笑顔を見せるリリスに、私はちくりと良心が痛んだ。

さっきの言葉はとっさに出たものだし、本心に違いないけれど……今の今まで私はリリスが皇女になれて喜んでいるとばかり思っていた。

でも彼女が吐露した本音は、あまりにも不安に満ちている。当たり前だ、今までの暮らしが一変したのに動揺しない人がどこにいるだろう。

(どうしてわかってあげられなかったんだろう)

物語の通りに話が進んで、リリスは陛下に溺愛されてなんの不安もなく幸せいっぱいだとばかり思っていた。

だけどそれは、今まで会えなかった『家族』に会えて受け入れてもらえた部分だけで……皇女なんて重たい責任を負いたかったわけじゃない。

私が逃げ出したいのと同じように、彼女だってそれがどれだけ大変なものなのか、学んで知ったのだから。いいや、聡明だから私よりもずっとずっと、その重責を理解しているのかもしれない。
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