皇女殿下の幸せフェードアウト計画
挿話 リリスの証言


私は、山奥で育った。

小さな炭焼き小屋、優しいおじいさんとおばあさん。

それが私の全部だった。

おじいさんとおばあさんは私の本当の『家族』ではない。

私の母親は、何者かに追われて身重のまま山を登り、二人に会って匿ってもらって、そしてわたしを産んでそのまま帰らぬ人になったのだと聞いている。

いくばくかの遺品は、身元の特定に至らず……当時、匿ってすぐにおばあさんが麓の村から国の兵士に保護をお願いするべきだと言ったのを、母自らが拒否したらしい。

(どうしてだったんだろう)

何か理由があるのだろうがとにもかくにも妊婦を放置するわけにもいかないと二人が甲斐甲斐しく世話をしたという話だ。

それを丸々信じたのは、母を失った私を大切に、慈しんで育ててくれたからに他ならない。
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