皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「ご存知ないですか? それも無理はありません。もう二十年くらい前に姿をぷっつり消してしまった歌姫です。このアルセイド帝国の皇帝と恋に落ち、一度は別れたものの二人の愛の炎は気ゆることなく燃え続け、遂には結ばれる……なんて吟遊詩人もかくやの恋愛劇を繰り広げた伝説の歌姫です」

「まあ、そうなんですね」

皇帝と歌姫の恋愛だなんて、そりゃあ吟遊詩人たちも大喜びだろうと他人事だった。だから適当に相槌を打って、早々にこの話題を切り上げようとした。

だけど、続けられた言葉がなんとなく、気になった。

「世間じゃア、皇后陛下が皇帝陛下の愛情を一身に浴び続けていたラエティティア様を妬んで暗殺しちまったんじゃないかって噂まであるんですよ。……そういえば、あの方が姿を消したってのが、確かこの辺りでしたねエ。当時ラエティティア様はお子を身籠られておいでだったとか」

どうしてだろう。

二十年前、この近くで行方不明になった女性。

「……その歌姫が私に似ていると?」

「ええ! と言っても絵姿で見たことがあるだけなんですけどねえ。どうです? もし旅の一座とかに興味があるなら口利きをしますが」

「いえ、結構」
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