皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「偽りとはなにかしら。ほら、例えば私が、母が皇后陛下に暗殺されたかもしれないっていうのは偽りだけれど……人々が自覚するっていうのは規模が違うわ」

「それは……」

神の言葉だから私たちと規模が違うのでは。

そう言いたくなったけれど、お姉様の言いたいことはもっともだった。

「人々が自覚するっていうことは、とても大勢が同時に何かの偽りが暴かれる瞬間に立ち会うってことじゃないのかなと思うの」

「……」

「そして、このタイミングならば直近で、各国の人が揃って大勢が集まる、舞踏会がある。それも、予言にある乙女たちが揃っている。これって偶然かしら?」

お姉様が厳しい顔をしながら、私をまっすぐに見た。

そして優しく笑みを浮かべ、私の手をぎゅっと握ってくれた。

「大丈夫よ、イリスのことは私が守るわ。貴女は、私の大切な妹だもの!」

「お姉様……」

ああ、そうだ。

予言の意味がなにかよりも、何がこれから起こるのかを予測して、どう動くべきなのか、それをお姉様はしている。

主人公だからとかじゃない、私が憧れる、行動力と思いやりのある人。ちょっと熱くなると視野が狭くなるのが玉に瑕で、美人で、無鉄砲に大切な人のために突撃できるような……美しく気高い人。
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