皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「大丈夫。貴女もちゃんと私を見てくれているもの」

「……お姉様?」

「父上は確かに私を愛してくれているのでしょうね。でも母の……ラエティティアの面影を追っているわ」

「それは」

「わかってる。それがあるから、私が娘だとわかったようなものだもの。……だからね、イリス。私たちはふたりぼっちの姉妹なのね」

ふたりぼっちの姉妹。

初めて聞いた言葉に、思わず顔を上げた。

お姉様は、優しく微笑んで私の額にキスを落とし、涙を拭ってくれた。

「大丈夫よイリス。どんなことがあろうとも、なにがあっても私が貴女を守ってみせる」

「おねえさま……」

「いつか互いに、愛する人が見つかっても。それでも私たちは姉妹だわ。私たち同士でしかわからない、欠けた心を抱えているの」

欠けた心。

確かにそうだ。言われてしっくりきた。

「欲しがりで、臆病で、でも慣れ合うわけでもない。本当に、私たちはそっくりね」

お姉様の目が、悲し気に歪んだ。でも、彼女は泣かなかった。

一度目を伏せて、次に開けた時にはいつものように意志の強い眼差しで立ち上がってしまった。

「今は、ゆっくり休みなさい。十日後の舞踏会、それがきっと私たちにとって……いいえ、すべての人々にとっての転機となるかもしれないのだから」
< 327 / 370 >

この作品をシェア

pagetop