皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「フォルセティ」

「姫、おれは」

「大丈夫よ」

逆上した亡霊の魔法使いによって家族を殺されて、記憶を奪われて、それでも操り人形にされないために逃げ延びた人。

そして出会う人出会う人に親切にし、時に過ちを正し、己の信念に従って生きてきた。

「フォルセティ、私は貴方を信じているわ。どんなに迷っても、苦しくても、私がいるわ。貴方が掴み取る未来は、貴方のものよ」

「……姫」

少しだけ、震えるフォルセティの手を私は握った。

縋るためじゃない、私がここにいるのだと示したくて必死だった。

ばちばちと雷は今もあちこちに落ちて床を焦がし、跳ねて誰かに当たっては悲鳴を挙げさせる。

亡霊の魔法使いはそれを聞いては笑っている。

私だって、怖くないわけじゃない。むしろ、怖い。逃げたい。逃げたいけど立てそうにない。

生まれたての小鹿かってくらい、みっともないくらいカタカタ震えているし。鹿なら可愛いけど私じゃただみっともないだけだ。

正直フォルセティに話しかける声は震えっぱなしで時折声が裏返っているような気がしないでもない。
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