皇女殿下の幸せフェードアウト計画
「おれの、過去を知っている男が、あそこにいる」

うわごとのような彼の言葉に、私はぎゅっとフォルセティの手を握る。

(知ってるよ、フォルセティ)

前世の私が、今の私が、知っている。

フォルセティが、自分の過去を探して旅をしていることを、どんな過去であろうと知りたいと零していたことを、自分の家族について知りたいと、自分のルーツを知りたいと渇望していることを。

『来い、フォルセティ』

「いかないで、フォルセティ」

そのカギは、目の前のローブの塊だ。

響く声が誘いをかける。私は行かないでと縋るしかできない。

『……時間切れか』

ふと、声が残念そう言った。

そこまで高笑いしたり妙にテンションが高かったのに、急に静かになるそれが気持ち悪くてたまらない。
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