皇女殿下の幸せフェードアウト計画
お母様は多分、言いたいことだけ言って満足したんだと思う。

穏やかな笑みを浮かべたかと思うと近くにある盃に手を伸ばした。

「恋を捨てきれぬ愚かな女だと自覚はしています。それでも母として、そなたを遠ざけたのは……そうすることで、わらわの罪がそなたにいかぬようにするため」

「……お母様?」

「陛下、エイモン殿に寛大なるお心でお許しくださいますようお願いいたします。すべての罪はこの愚かなる女にございます。咎はただ、わらわ一人に」

まるで乾杯の音頭を取るかのようにお母様が盃を皇帝陛下に掲げ、そしてそれを勢いよく飲もうとした。その瞬間、私の後ろにいたフォルセティが誰よりも早く動いて、お母様の手首を掴んだ。

その衝撃で手から零れ落ちた盃とその中身が、近くにあった水槽に落ちて水を汚し――そして、水槽の魚たちがぷかりと白い腹を見せたことに私はようやくお母様が服毒自殺を図ったのだと理解して息が止まるかと思った。
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