秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
「しょ、翔悟さん、いきなりなんで。降ろしてくだい」
「ひどい顔色で立っているのも辛そうだから、俺が運ぶ」
「私は大丈夫です」と何度言っても聞く耳持たずで、すれ違う人の視線を気にすることなく部屋の前まで私を運んでくれた。
「少しだけで良い。話をしても良いか?」
バッグから自宅の鍵を取り出すと、後ろから翔悟さんに問いかけられた。肩越しに振り返り、数秒見つめ合った後、私は力なく微笑み返す。
「私も、翔悟さんと話がしたいです。どうぞ中に入ってください」
ドアを開けて、彼を招き入れた。玄関でもたもたと靴を脱いで先に家に上がり、持っていたバッグをテーブルに置いて、脱力するように息をついた時、「これは」と彼のつぶやき声が聞こえた。
顔を向け、ハッとする。私の仕事の荷物が入った箱の横に佇んでいた彼は、伸ばした手で現金が入った封筒を掴み取った。
ちゃんと返すつもりでいたけれど、それを言っても言い訳にしか聞こえないのではと怖くなる。それならばいっそと、諦めの気持ちと共に私は口を開いた。
「会長からもらいました。だから私はもう、翔悟さんとお付き合い出来ないんです」