秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
私はもちろん自分が勤める会社の副社長として、翔悟さんを前々から知っていた。格好良さに一目惚れだったと言っても過言ではない。
そんな憧れの相手が目の前に現れ舞い上がるも、話しかける勇気はなかった。会社から離れても、ただ見つめるだけなのは変わらないのに、それでも私は幸せだった。
いつもは雲の上の存在の彼と、同じ空間で同じように時間を過ごしている。プライベートの彼を身近に感じられ、とても嬉しかったのだ。
ちらちらと翔悟さんを見ていた時、撫でていたバニラが気まぐれな様子で私の手を離れた。
寂しい気持ちで「バニラちゃん」と呼びかけたけれど、彼女はこちらを振り返りもせず、あろうことか、移動先として選んだの翔悟さんだった。
彼の膝の上にバニラが前足を置き、すぐに翔悟さんの視線がやってきた小さな来訪者に向けられる。そしてそのまま、彼の目が私の方に向いた。
目があってしまった。はじめての瞬間に一際大きく鼓動が跳ね、緊張で手が震えたのを今でもはっきり覚えている。
ぎこちなくわずかに頭を下げると、彼も軽く視線を落とすようにして挨拶を返してくれた。