秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
ドキドキしながら目をそらし、早速バニラの姿を探し始めた。しかし他のお客さんの元にも、キャットタワーにもいなくて、なかなか見つけられず店内をウロウロしていた時に、話しかけられた。「ここにいますよ」と。
振り返ると、翔悟さんの腕にバニラがおとなしく収まっていた。
私が店を後にするそれからの三十分間、ずっと会話は途切れなかった。
猫の話から始まり、翔悟さんも私をよく店で見かけると思っていたことなど。それから、うっかり彼を「副社長」と呼んでしまったことで、私がヒルマ物産の社員だということがばれてしまい、どの部署にいるのかなど話は広がっていったのだ。
その日を境に、私たちの距離は徐々に縮まっていく。
会社ですれ違う時、彼が私に気づいてくれるようになり、店であったときにそれが話題にのぼったり。
先に店を出た私を彼が追いかけてきてくれて、これから食事をしませんかと誘ってもらえた時は、涙がでそうになったほど。
それから店の外でも会うようになるまでそんなに時間はかからなかった。
そして休日デートをすること三回目。食事を終えて向かった展望タワーでふたり肩を並べて夜景を見つめていた時、「俺たち付き合わないか」と彼が言った。