秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
驚きとともに早口で否定すると、今度は彼が目を大きくさせる。けれど、表情に現れ出た驚きは瞬きをするくらいの一瞬の出来事で、速やかにいつもの無表情に戻っていった。
「そ、そうか」
珍しくもごもごと言い終えた後、彼は短く息を吐いて猫を撫で始めた。
もしかして嫉妬してくれたのかと気持ちが舞い上がりかけていたというのに、完全に私から気持ちがそれたのが伝わり面白くなくて、ちょっぴりふくれっ面になる。
「行きませんよ。私には翔悟さんがいますから」
「そうか」
面白くなかったはずなのに、返ってきたそのひと言で簡単に鼓動が高鳴り出す。
言葉はさっきと一緒なのに、二回目の「そうか」は声に温かさに満ちていた。同時に「良かった」と、そして「嬉しい」とも言われたような気分にさせられ、頬が熱を帯びる。
恥ずかしさを誤魔化すように「そうですよ」とぶっきらぼうに言い返し、私は近づいてきた茶トラの背中を撫でた。
お互いそこまで口数が多い方ではないため、会話はぽつりぽつりと続くだけ。
翔悟さんに仕事関連の電話がかかってきて席を外したり、私にも珍しく実家から連絡がありその場を離れたりしているうちに、終了の時間を迎える。