秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
ひとつ息をついて、彼の手が私から離れていった。なんとなく寂しくなり、私はその手を目で追う。
「テレビでも見ていてくれ、俺は気分転換に風呂に入ってくる」
言い終えると同時に、翔悟さんが歩き出す。
「わかった。ごゆっくり」と言葉を返すが、彼の進む先からそれが部屋にある露天風呂を指しているのだと分かり、思わず唇を引き結ぶ。
彼と一緒の時間は私にとって夢のようだ。一分、一秒、全てが大切な時間なのだから、わずかでも離れたくない。
浴室の扉が閉まり、程なくして流れる水の音が聞こえてきた。やや躊躇ってから、私は立ち上がる。
布団が敷かれた部屋を横切ったその先に、テーブルとソファーが置かれただけの広縁がある。ガラス戸の向こうに露天風呂、湯に浸かる彼の姿がある。
私の視線を感じたのか、翔悟さんがこちらへと顔をむけ、ほんの一瞬目を大きくする。
ソファーの上には、彼が先ほどまで身につけていた浴衣が無造作に置かれ、私はそのそばで足を止める。
扉の近くの棚に備えられていたタオルを掴みとってから、改めて翔悟さんと視線を合わせた。しかし、数秒も持たなかった。恥ずかしさからすぐに私は翔悟さんに背中を向ける。