秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

震える手で解いた帯と着ていた浴衣を足元へと落とし、下着もその場に脱ぎ捨てる。

タオルを自分の体に巻きつけ振り返る。再び翔悟さんと視線が絡み合い、私は喉の渇きを覚えた。

怖気付きそうなのに、足はゆっくりと彼に向かって進み始める。

かちゃりと扉を開けた音がやけに大きく響き、緊張が増す。鼓動が加速する中、ひんやりとした外気へと一歩踏み出した。


「穂乃果」


突然の私の行動に、翔悟さんも驚きを隠しきれないでいたが、私がそばまで歩み寄ると不敵な笑みを浮かべ、誘うように手を差し伸べてきた。


「無理なんじゃなかったか?」


私は湯船の縁に左手をつき、ほんの少し微笑んでから濡れた彼の手に右手を重ね置く。


「嫌だから来ました。たとえ家族の誰かだったとしても、今だけは翔悟さんの心に入ってきてほしくない」


週が明けたら、彼と気軽には会えない日々に戻るのだ。

だからこそ、翔悟さんとの夢のようなこの時間を邪魔されたくない。独り占めしたいのだ。


「お願い。私だけを見てて」


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