秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
瞬間、副社長と視線がぶつかった。正確には、ぶつかったように思えた。副社長が眉毛すら動かすことなく、そのまま正面を向いてしまったから確信が持てなかったのだ。
たとえ私に気づいてなかったとしても構わない。愛しい彼の姿を見れただけで私はとても幸せだから。
「はぁー。蛭間副社長、今日もめちゃくちゃ格好いい」
温かな感情で胸が満たされていくのを感じながら、沙季の言葉に「うん」と同意する。
すると、彼の姿が完全に視界から消えたことで現実に引き戻されたのか、沙季が再び私の腕を掴み、駄々をこねる子供のように小刻みに横に振り始めた。
「話戻すけど、合コン……」
「戻さなくていいから! 私は行かないから!」
ぴしゃりと言い放ち、彼女の手を振り切って小走りにエレベーターへと向かい出す。
合コンなんて行かない。だって、私には蛭間翔悟という素敵過ぎる彼氏がいるのだから。
同じく総務部の人々が定時で仕事を終え、次々とデスクを後にする中、私は課長から頼まれた仕事を続ける。いわゆる残業である。
そんな中、別の参加者を無事見つけた沙季が私の元に立ち寄った。
「次、同じようなことが起きた時は、協力してよね!」
「繰り返すことがないよう祈ってるね」