秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~
電車に乗っている時に翔悟さんの家に行ってしまおうかと考えた。けれど、会ったら亜裕子さんのことを問い詰め、喧嘩になってしまいそうで怖くなり、結局足が向かなかったのだ。気持ちが負けてしまったのを、帰宅してからずっと心の片隅で後悔していた。
「そんなことを言われたら、今夜もまた腕の中に閉じ込めておきたくなる。……これから攫いに行っても良いか?」
「……はい! 準備してお待ちしています!」
彼からの提案が、一瞬で不安を吹き飛ばした。満面の笑みで返事をし、通話を終えて勢いよく立ち上がる。何から準備を始めようかとうろうろし始めた途端、キュルルとお腹が音を発した。さっきまで空腹感もなかったのに、急に食欲までわいてきたことに苦笑いを浮かべる。お夕飯の相談もしようとパジャマから私服へと着替えるべく、ボタンに手をかけた。
それから三十分もかからずにスマホが翔悟さんの着信を告げ、私は着替えやらが入ったボストンバッグを抱えて家を飛び出す。
助手席に乗り込むとすぐに、運転席から伸びてきた手が私の頬に優しく触れた。
「良かった。もう泣いてないな」
翔悟さんの瞳の奥が不安で揺らめいている。余計な心配をさせていたのを今更ながら気付かされ、私はそっと彼の手に自分の手を重ね置いて、微笑みかけた。